特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第7集
血液生化学検査
蛋白
フェリチン
新倉 春男
1
1昭和大学藤が丘病院内科血液
pp.138-139
発行日 2005年11月30日
Published Date 2005/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402101751
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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
フェリチンは肝,脾,骨髄などほとんどの臓器に分布する水溶性の鉄貯蔵蛋白で,生体の過剰で有害な無機鉄イオンを隔離,解毒し,また必要に応じてヘモグロビンや含鉄酵素の生成時に鉄を供給するという生理的役割がある1).血液中にも微量存在し,体内の鉄貯蔵状態をよく反映する.鉄は細胞内でフェリチンmRNAを増加させ,フェリチン合成を促進させることが知られている.体内のフェリチン量は男性で約800mg,女性で約200mgとされており,成人の血清フェリチン値1ng/mlは貯蔵鉄約8mgに相当するとされている.血清フェリチンの低下は貯蔵鉄の低下を意味し,鉄欠乏状態と判定できる.一方,高値を示す場合には,貯蔵鉄の増加(鉄過剰状態)のほかに,悪性腫瘍や炎症など臓器の障害による細胞からの逸脱が原因となる.つまり,血清フェリチン値を決めるのは貯蔵鉄と細胞からの逸脱である.
臨床上の重要性と選択
1. 貧血の診断・分類
貧血が認められる場合,特に小球性低色素性貧血(平均赤血球容積MCV低下,平均赤血球血色素濃度MCHC低下)において,鉄欠乏か否かを決定するのに必須の検査である.鉄欠乏性貧血では血清フェリチン値は低下するが,プロトポルフィリン合成障害である鉄芽球性貧血,グロビン生成障害であるサラセミアでは上昇する.慢性感染症や関節リウマチなどの膠原病による,いわゆる慢性疾患に伴う貧血はしばしば小球性貧血を呈するが,血清フェリチン値は正常ないし,むしろ上昇する.
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