トピックス
サイトカインとフェリチン合成
新谷 直昭
1
,
高後 裕
1
1札幌医科大学第4内科
pp.234-235
発行日 1993年3月1日
Published Date 1993/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901439
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近年インターロイキン1(IL-1),インターロイキン6(IL-6)や腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor;TNF)などのサイトカインが,慢性炎症のさまざまな病態を説明するための起因物質となっていることが明らかとなってきた.中でも慢性疾患に伴う貧血(anemia of chronic disorders;ACD)は,一見鉄欠乏性貧血に似るが鉄剤の投与に反応せず,的確な治療法がないものとされてきた1).この貧血の原因は,通常効率よく使われる体内の鉄分が貯蔵組織である肝臓や脾臓にたまって出られず,骨髄での赤血球の産生に使われなくなるためである(この現象を「網内系ブロック」と称する).実際には,肝臓や脾臓の細胞内鉄貯蔵蛋白であるフェリチンの増加が関係している.なぜサイトカインが働くと細胞内のフェリチンが増加し,ひいては貧血までもたらすのか,その機序を明らかにすることは病態を説明するだけでなく治療法の開発にとっても重要であろう.
では,どうしてこのような現象が起こるのか,図を参照しながら説明する.ラットにテルペンチンを皮下注射し人工的に炎症を起こさせた後,その血清を採血し,他の健康なラットにその血清を投与すると貧血が再現できる.
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