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症例の概要
70歳代,男性.肝機能障害(γ-GTP高値)のため近医で経過観察中に,腹部腫瘤を指摘され,精査目的で当院を受診した.高血圧および糖尿病の既往はない.頭痛や多汗などの自覚症状はなく,入院時検査で高血圧(153/96mmHg),高血糖(175mg/dL),血中カテコールアミンの上昇(アドレナリン0.64ng/mL,ノルアドレナリン1.30ng/mL,ドーパミン0.03ng/mL),尿中メタネフリン高値(1.80mg/day)および尿中ノルメタネフリン高値(0.91mg/day)を指摘された.超音波検査→図1,2,腹部CTなどで,腹部大動脈右方に境界明瞭な充実性腫瘍を認めた.以上から,右後腹膜腫瘍の診断で腫瘍摘出術が施行された.病変は4.0×3.0×2.7cm大,全周性に線維性被膜を有し境界明瞭な黄白色軟の腫瘤で,一部暗赤色調を呈していた.囊胞変性はみられなかった→図3.組織診では,好酸性ないし淡明な細胞質を有し,核の大小不同や目立つ核小体を伴う腫瘍細胞が,充実性あるいは胞巣状に増殖するZellballen配列を呈していた.核分裂像は目立たなかった.間質成分は乏しく出血を伴っていた→図4,5.被膜浸潤はなく,脈管侵襲や転移は認められなかった.免疫組織化学的検索で,神経内分泌マーカーであるchromogranin A,synaptophysin,CD56,neuron specific enolase(NSE)が腫瘍細胞の胞体に陽性であった.捺印細胞診では,類円形の腫瘍細胞が散在性から一部小集塊で認められ,核に大小不同や大型核がみられ,クロマチンは顆粒状であった→図6.以上の所見より,パラガングリオーマと診断した.現在,当院外来にて経過観察中で,再発を認めない.
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