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患者 31歳,男性。
主訴 上腹部痛。
既往歴 12歳時に左網膜剝離。
現病歴 2001年10月19日21時頃より上腹部痛があり,当院内科に入院した。腹部CTで右副腎腫瘍を認め,泌尿器科に転科した。
入院時現症 身長172cm,体重81kg。体温38.0℃,血圧120/74 mmHg,脈拍95/分。上腹部に中等度の筋性防御を伴う圧痛を認めた。
検査所見 血液生化学および尿検査は正常。血中コルチゾール・アルドステロン,血中および蓄尿カテコールアミン3分画,蓄尿17-OHCS・17-KS・VMAは正常範囲内であった。
画像所見 腹部CTにて肝右葉下面との境界が明瞭で,中心壊死のため不均一に造影される10×8cmの腫瘍を認めた(図1)。MRIではT2強調画像で不均一な高信号を示し,ガドリニウムで造影効果を認めた(図2)。腹部血管造影では腫瘍血管が豊富であり,大動脈から直接分岐する栄養血管のほか,右腎動脈や下横隔膜動脈からの血流も認められた(図3)。さらに,下大静脈は腫瘍により強く圧排されていた(図4)。131I-MIBGシンチでは腫瘍に限局した強い集積が認められた(図5)。臨床症状,検査所見,画像診断から無症候性副腎褐色細胞腫と診断され,2001年12月12日に手術を施行した。
摘出標本 最大径11cmの中心壊死と出血を有する褐色の腫瘍であり,腫瘍辺縁に正常な副腎を認めた(図6)。
病理所見 比較的小型でやや好塩基性胞体をもつ腫瘍細胞が巣状ないしは索状構造を示し,毛細血管に富む結合組織性間質で囲まれた腫瘍細胞巣を形成していた。また核にはわずかに分裂像を認めた。さらに組織学的に正常な副腎髄質が確認された(図7)。以上の結果より副腎近傍より発生したパラガングリオーマと診断が確定した。
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