増刊号 超音波×病理 対比アトラス
3章 甲状腺・副甲状腺
8 サイログロブリン遺伝子異常症―30歳代女性
廣川 満良
1
,
樋口 観世子
2
,
太田 寿
2
1隈病院病理診断科
2隈病院臨床検査科
pp.996-998
発行日 2014年9月15日
Published Date 2014/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543104428
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症例の概要
30歳代,女性.生下時から甲状腺腫大が認められた.約10年前に甲状腺腫大が目立つようになり,当院を受診した.dyshormonogenetic goiter(後述)が疑われ,経過観察されていた.甲状腺機能検査では,遊離サイロキシン(FT4):0.53(0.7~1.6)ng/dL,遊離トリヨードサイロニン(FT3):2.71(1.7~3.7)pg/mL,甲状腺刺激ホルモン(TSH):4.059(0.3~5.0)μIU/mL,サイログロブリン:4.8ng/mL(0~35)ng/mL,抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb):≦0.3(0~27.9)IU/mLであった.放射性ヨード摂取率は2時間値で50.8%,パークロレート放出試験は放出率1.7%と陰性であった.超音波検査では,甲状腺は著明に腫大し,推定重量は185gであった.甲状腺内には多発性の結節性病変がみられた.それらの結節は形状整で,等からやや低エコーを示し,均質な内部構造を示す充実部が多く,一部は囊胞化と思われる無エコー部が混在するものもみられた.甲状腺実質はやや不均質で,ドプラ法では,血流シグナルが著明に増加していた.結節部および非結節部の穿刺吸引細胞診が行われ,いずれも良性と判断された.多結節性病変を含む著明な甲状腺腫大の原因として,遺伝子検査にてホモのミスセンス変異(Cys 1264 Arg)を認めたため,甲状腺全摘術が行われた.
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