特集 ホルモンの病態異常と臨床検査
コラム
サイログロブリン遺伝子異常と甲状腺腫
菱沼 昭
1
,
家入 蒼生夫
1
1獨協医科大学臨床検査医学
pp.1183
発行日 2008年10月30日
Published Date 2008/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101783
- 有料閲覧
- 文献概要
サイログロブリン(Tg)遺伝子異常というと,重症の機能低下症と考えられがちであるが,必ずしもそうではない.諸外国では重症例の報告が多いが,日本では軽症例が多い.特に,マススクリーニング開始前の1979年以前の出生例では,原因不明の腺腫様甲状腺腫として診断されている.甲状腺機能は正常~軽度機能低下である.1979年以降の出生例では約3/4の症例がマススクリーニングで発見されているが,約半数は機能低下が軽度のため,治療は中断されているか,全く治療は受けていない.日本で軽症例が多い原因はヨード摂取が十分でホルモン合成障害を補っていると推測される.
Tg遺伝子異常による甲状腺腫は,若年期より存在する軟らかい甲状腺腫で,血流は豊富である.これらは他のホルモン合成異常症と共通する特長であるが,さらに,ヨード摂取率が高値で,有機化障害がなく,血清Tg値は甲状腺腫が大きいわりには低値である場合,Tg遺伝子異常を疑う.後者の機序は,異常Tgは細胞内を正常に輸送されず,小胞体に蓄積するためである(小胞体貯蔵病).したがって,組織的には濾胞内にコロイドが欠乏している.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.