トピックス
サイログロブリン遺伝子とその異常
家入 蒼生夫
1
1獨協医科大学臨床病理学
pp.177
発行日 1994年10月30日
Published Date 1994/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902214
- 有料閲覧
- 文献概要
サイログロブリン(Tg)は,甲状腺濾胞細胞で合成される分子量66万の巨大な蛋白で,コロイド内に蓄えられている.この蛋白の立体構造を利用して甲状腺ホルモン(T4, T3)が合成される.Tgの量的・質的異常は,種々な程度の甲状腺機能低下症(粘液水腫)の原因となる.
Tg遺伝子のcDNAの配列は,ウシ(Mercken, eta1:Nature 316:647,1985),ヒト(Malthiery, etal:Eur J Biochem165:491,1987)と相次いで明らかとなたが,イントロンを含めた全貌は,まだすべてが明らかとなったわけではない.ヒトでは第8染色体上のバンドq24に位置し,癌関連遺伝子c-mycの遠位部に存在する.これら2つの遺伝子の位置的関係は,ウシ(第14染色体),ラット(第7染色体)などでも保たれている.ヒトTg-mRNAは8,448個のヌクレオチドからできているが,5′端と3′とで構造上違いがあり,進化論的に異なる起源を持つものと考えられている.5′端の3/4を占める部分は,システインをコードする部分が多く,Tg分子の立体構造を決めており,3′端1/4は,アセチルコリンエステラーゼ遺伝子との類似性が高く,おそらく共通の起源を持つ遺伝子と考えられている.
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.