増刊号 超音波×病理 対比アトラス
3章 甲状腺・副甲状腺
9 篩型乳頭癌―20歳代女性
廣川 満良
1
,
樋口 観世子
2
,
太田 寿
2
1隈病院病理診断科
2隈病院臨床検査科
pp.999-1001
発行日 2014年9月15日
Published Date 2014/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543104429
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症例の概要
20歳代,女性.会社の検診で甲状腺腫を指摘された.近医にて左甲状腺腫瘍と診断され,当院に紹介された.甲状腺機能検査では,遊離サイロキシン(FT4):0.79(0.7~1.6)ng/dL,甲状腺刺激ホルモン(TSH):0.312(0.3~5.0)μIU/mL,サイログロブリン:11.7(0~35)ng/mL,抗サイログロブリン抗体(TgAb):≦0.3(0~39.9)IU/mLであった.超音波検査では,甲状腺左葉に多発性結節が認められた.上極の結節は29×19×20mm大,充実性,形状は不整で,境界は一部が粗雑であった.内部のエコーレベルは低でやや不均質,微細高エコー像は観察されなかった.また,後方エコーの増強がみられた.ドプラ法では,結節内部および周辺の血流シグナルは乏しかった.下極の結節は14×12×14mm大で,形状整,辺縁平滑であった.内部のエコーレベルはやや低で不均質であった.超音波診断は上極の結節は濾胞癌の疑い,下極の結節は腺腫様甲状腺腫であった.左葉上極結節の穿刺吸引細胞診が行われ,篩型乳頭癌と診断され,甲状腺全摘術と中央リンパ節郭清が行われたが,リンパ節転移は認められなかった.また,遺伝子検査にてAPC遺伝子異常が認められ,大腸には最大径20mm大までのポリープが多発していた.
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