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血友病Aは血液凝固第VIII因子(factor FVIII,FVIII)の異常によって引き起こされる出血性疾患である.この疾患の出血傾向は患者血中の因子活性(FVIII:C)とよく相関し,5%以上の因子活性を有する場合を軽症と称する.FVIIIは,産生された少量のトロンビンによる活性化を受け,止血に十分なトロンビンバーストを引き起こす重要な補酵素(増幅因子)として機能する.したがって5%以上の活性を有する本疾患は日常生活に支障をきたす出血傾向を認めないことが多い.しかし,このことは診断の遅れや患者の病識不足につながりやすく,時として大出血による重篤な状態に至ることがある.
血友病Aの診断はスクリーニングとしての活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time,APTT)と,確認試験としてのFVIII定量の2段階で行われている.すなわち,APTTで延長が確認され,その後のFVIII:C測定で明らかな低値(一般的に約30%以下)が確認された場合に血友病Aの診断に至る.わが国におけるFVIII:C測定はAPTTに基づく凝固一段法によって行われる場合がほとんどであることから,血友病Aの診断には2回のAPTTが関与することになる.APTTは内因系凝固機構を調べる検査であり,内因系のスクリーニングはもちろんのこと,凝固因子定量,抗リン脂質抗体症候群の診断,抗凝血薬のモニターなどにも繁用されるが,試薬が多様性に富み,用いる試薬によって結果が異なる“トリッキー”な検査としての認識をもつ必要がある.また,精密度も決して良好な検査ではない.日常の生活では明らかな出血傾向を認めない場合も多い本疾患では,このようなAPTTの問題もあり,診断に至っていないケースもあると推測される.
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