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はじめに
アポトーシスの組織化学的証明法として,ヌクレオソーム単位のDNA断片化を検出するterminal deoxynucleotidyl transferase-mediated deoxyuridine triphosphate-biotin nick end labeling(TUNEL)法,in situ nick translation法や単鎖DNA免疫染色が広く利用されてきた.しかし,これらの証明法は,固定を含めた標本作製過程や標本採取時の影響により偽陽性・偽陰性反応を生じやすいだけでなく,再現性を高めるための前処理(増感法)を含めた技術論にも不安定な側面を有している1,2).
近年,アポトーシス誘導因子,実行因子の同定とシグナル伝達経路の解析が盛んに行われ,アポトーシスにおいて生じる生化学的・形態学的変化の多くは,システインプロテアーゼの一種であるcaspasesによる特定蛋白質の限定分解に依存することが解明された.なかでもcaspase3はアポトーシス実行過程における中心的酵素であり,活性化されたcaspase3(cleaved caspase3,c-caspase3)を検出することで,組織・細胞内のアポトーシスをDNA断片化よりも早い段階から捉えることができる.加えてc-caspase3免疫染色は技術的に安定しており,感度および再現性に優れた組織化学的アポトーシス検出法である1,2).
癌治療においてもアポトーシスは抗腫瘍効果発現に重要な役割を担っており,化学療法および放射線療法はアポトーシス誘導因子として理解されている.したがって,本稿では化学療法・放射線療法によって誘導されるアポトーシス経路におけるc-caspase3の位置づけについて概説する.次いで,癌臨床に連携した免疫組織化学の視点から治療の効果判定,治療効果・患者予後の予測におけるc-caspase3検出の意義について言及する.
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