技術解説
パラフィン切片におけるHBs抗原の染色法—カラーグラフ参照
志方 俊夫
1
,
鵜沢 輝子
1
1東大病理
pp.590-596
発行日 1975年6月15日
Published Date 1975/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917691
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HB抗原(オーストラリア抗原,B型肝炎抗原)はB型肝炎ウイルスのマーカーであるが,流血中に見られる直径420ÅのDane粒子がB型肝炎ウイルスそのものであることがほぼ明らかになった.このDane粒子はその中に直径270Åのコアをもっているが,このコアとその周囲の被覆タンパクは抗原性も化学的性状も異なる.現在このコアをHBc抗原(B型肝炎コア抗原),被覆タンパクをHBs抗原(B型肝炎炎在性抗原)と呼んでいる.血中に多数認められる直径200Åの小型粒子およびそれがつながったと考えられている杜状粒子は過剰に作られたHBs抗原である(図1).
このB型肝炎ウイルスは比較的特異的にヒトの肝細胞で作られる.この際コア,つまりHBc抗原は肝細胞の核内で増生する.これに対してHBs抗原はウイルスの核酸のインフオーメーションを受けて宿主肝細胞のライボゾームで作られ小胞体内腔に分泌される.このHBs抗原自体は普通の電子顕微鏡では特別な構造を示さないが,後述するようにHBs抗原が細胞質内に増生して細胞質内封入体を形成する時期になると,滑面小胞体が増生し,その中にフでラメント様構造物を入れた像が認められる.このフでラメント様構造物がHBs抗原そのものかどうかは現在のところ不明である(図2).
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