技術解説
パラフィン切片による脂肪染色の試み
諏訪 幸次
1
,
須山 貞子
1
,
長嶋 和郎
1
1東大病院病理部
pp.141-144
発行日 1976年2月15日
Published Date 1976/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542909269
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歴史的にみると,脂肪を組織学的に染色する最も古い方法はosmium tetroxide (四酸化オスミウム,以下OsO4と略す)の還元法であり,OsO4は不飽和脂肪酸と反応して黒色のOsO2(二酸化オスミウム)に変化することを利用したものである.髄鞘もOsO4で黒くなるが,Marchi(1892)は,クロム酸液で前処置を行うと変性した髄鞘のみが黒色を呈することを報告し,以後この固定液は変性髄鞘検索法CMarchi法)として利用されている1).
一方,現在電子顕微鏡標本の固定液として用いる四酸化オスミウム(OsO4)に固定された脂質はアルコール不溶性となることも実証されている2).また,重クロム酸カリ(K2Cr2O7)も類脂質安定固定剤であることも知られており3),したがってOsO4とK2Cr2O7とを両方含んだ液で固定することにより,パラフィン包埋でも脂肪の溶出を防ぐことが当然期待され,既にLuna (1960)4)はこの固定剤を用いたパラフィン切片による脂肪染色を勧めている.
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