技術講座 病理
パラフィン切片におけるギムザ染色
石原 力
1
,
城下 尚
2
1群馬大学医学部附属病院中央検査部
2群馬大学医学部臨床検査医学教室
pp.1191-1194
発行日 1990年8月1日
Published Date 1990/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900345
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サマリー
ギムザ染色は血球やマラリア原虫の観察のための染色法として発達し,今日でも広く使用されている.この染色法を組織検査用のパラフィン切片に応用する試みは古くから行われてきたが,いまだ満足の得られる方法は少ない.成書によれば,固定法などにはツェンカー,ヘリーといった昇汞を含むものがよいとされているが1,7),水銀を含む固定液は環境汚染との絡みで廃液処理が大変であり,実用上問題が多い.また,染色時間も比較的長時間の方法も多く,ルーチン業務の中に組み込むうえで問題がある.また,染色液の中では大変きれいな状態に染色されているのにもかかわらず脱水の過程での脱色が早く,塗抹標本のような多彩な染色像とはほど遠い単調な染色標本となってしまいやすい.通常,組織標本作製に用いられる脱水用エチルアルコールは,ギムザ染色においてはまったく役に立たない.すなわち,エチルアルコールは分子量が少さく,ギムザ色素が容易に溶出してしまうため脱色が激しく,脱水用としては使用に耐えない6).また,塗抹標本のように乾燥による脱水法では,ギムザ染色の特徴的所見が保存されず観察の役に立たない.ギムザ染色においては,いかに水を抜き,封入し,標本とするかが課題といえる.
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