基礎科学からの提言・3
真に科学を知る医師を
八巻 敏雄
1
Toshio YAMAKI
1
1産業医科大学
pp.1034-1042
発行日 1983年9月15日
Published Date 1983/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911972
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はじめに
「医療,医学に対しての基礎科学者からの提言」という旨の原稿依頼を受けて,そんな大それたことをと一時は思ったのですが,平常考えることもあってお引き受けすることにしました.それは私が東京大学教養学部基礎科学科に教師として籍を置いていたときに,理・農・薬学部の併任教官・講師を勤めた経験と,停年後の2年間を工学部工業化学科で研究を続ける幸福に恵まれたこと,そして産業医科大学に来て多くの医学関係の方々と親しく接する機会を得たこと,さらに医師である身内の一人が白血病で入院治療していていろいろと考えさせられる場面に接しているからです.
生物学を学んできた私のつねづね考えることは,生物にはいろいろな種がありそれぞれが独自の生きかたをしているとともに,生きているということですべてが共通した面を持っているということです.すなわち細菌・カビのような微細な生物も,イネ・サクラ・マツといった植物も,カイコ・ニワトリ・ネズミといった動物も,そして哺乳動物霊長類であるヒトも例外ではなく,それぞれの体を造る細胞が生きており,増殖するという面など共通した生物現象を営んでいるということです.
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