特集 医療社会事業の役割
論点
医療社会事業に何を期待するか
真に国民のためのものにする努力こそ必要
鷲谷 善教
1
1日本社会事業大学
pp.146-147
発行日 1968年3月15日
Published Date 1968/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203636
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ばらばらな実践活動
日本の現在の医療社会事業はそれを直接担当している従事者だけでなく,医師,看護婦,保健婦などの関係者や彼らの所属している機関や施設自体さえ,さまざまなとらえかたをしている。医療社会事業そのものはアメリカにおいて生成・発展の歴史をもち,必然性をもっている。そしてアメリカの医療社会事業はそれなりの理論と方法をもっている。わが国の医療社会事業の主流もこれを典型とし,継承しているところに特徴がある。しかし,現実の医療社会事業はそれにアプローチする人々の立場によって著しく違った様相を示し,そのため歩調が合わず,統一の意志や行動が生まれにくく,一部のやや気負った従事者の専門的自負心が医療社会事業の名を支えているような状態がある。
あるものはアメリカの医療社会事業を信奉して,それの忠実な実践を本務と考え,あるものは新しい観点から医療社会事業をとらえ直そうとし,またあるものは医療社会事業の名のもとに,羊頭を掲げて狗肉を売るような策を講じている。しかし問題は,国民皆保険のたてまえにもかかわらず,現実には医療から見離された数多くの働く国民がいるという社会現象を前にして,医療社会事業が,患者ひいては国民大衆の医療にどのように役立ち,それを阻害する諸条件に対してどのように取組むかであろう。これを明らかにするためにまずわが国の医療社会事業の歴史を追求する必要があるであろう。
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