今月の主題 血液凝固検査と合成基質
総説
血液凝固の新しい考えかた
名倉 英一
1
,
斎藤 英彦
1
Eiichi NAKURA
1
,
Hidehiko SAITO
1
1佐賀医科大学内科
pp.873-880
発行日 1983年8月15日
Published Date 1983/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911938
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はじめに
血液は生命維持にたいせつな酸素や栄養素を組織に運搬し,炭酸ガスや代謝産物を搬出するなど,われわれの生存にとって不可欠なものである.血液成分が血管外へ失われる出血は生体にとって不利な出来事であるので,出血を防ぐ巧妙な止血機構が備わっているのは当然である.なんらかの原因で血管の断裂が起こって出血すると,その部位の血管壁と血液成分に一連の反応が起こり,出血が止まる.この機序は二つの反応段階に分けて考えられており,最初は血小板と血管壁との相互反応により血小板血栓が形成され(一次止血),次いで凝固系の活性化により凝集した血小板を包む形でフィブリン線維の網が出現し,さらにこの血栓はトロンビンにより活性化されたフィブリン安定化因子(第XⅢ因子)により安定されて強固なものとなる(二次止血).
血液凝固が止血に大きな役割を果たすことは血友病患者にみられる著しい出血症状からも明らかであるが,一方,血液は血管内では凝固せずに流動性を保っていなければならない.したがって,必要な時と場所でのみ凝固反応が起こることが肝要である.過去10年間における凝固の生化学的研究の発展は目覚ましく,凝固因子およびその阻害因子の精製,性質,活性化機構,一次構造の決定などまでも知られるようになった.
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