今月の主題 血液凝固検査と合成基質
カラーグラフ
血液凝固と合成基質
佐野 雅之
1
,
斎藤 英彦
1
1佐賀医科大学内科
pp.840-842
発行日 1983年8月15日
Published Date 1983/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911932
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カラーグラフ解説
血液凝固因子または凝固阻止因子の活性は,従来もっぱら凝固法,すなわちフィブリン析出をエンドポイントとして凝固活性を調べる方法により測定されてきた.例えば,第Ⅷ因子活性を測定する際の,既知の先天性第Ⅷ因子欠乏血漿に検体を加えたときに,その部分トロンボプラスチン時間(PTT)がどれだけ補正されるかにより検体中の第Ⅷ因子活性を測定するやりかたである.この場合,フィブリン形成速度が第Ⅷ因子活性のみに依存するような測定条件を用いるわけである.しかし,フィブリン形成は多段階の反応が連鎖的に起こった総和であるため(図1),結果の解釈は複雑で再現性に乏しく,また手技に習熟を要するなどの欠点があった.
近年,凝固反応の生化学的研究の進歩,特に凝固因子の構造およびその活性化機構の解明により,多くの凝固因子は蛋白分解酵素(プロテアーゼ)の前駆体(zymogen)であり,いったん活性化されると,基質特異性の高いプロテアーゼとして特定のポリペプチド結合を水解することが明らかとなった.それとともに,凝固因子の活性を合成の基質により簡単に,迅速に,再現性高く測定しようという試みが出てきたのは,当然と言えよう.
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