検査法の基礎理論 なぜこうなるの?
血液の凝固
磯部 淳一
1
1徳島大学検査部
pp.318-324
発行日 1982年4月1日
Published Date 1982/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202472
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生体における血液凝固の意義
血管が損傷されると血液は血管外へ流出する.その際,損傷された血管の種類,太さ,及び血管周囲組織の傷害の程度により,皮内出血にとどまる場合から,出血死に至る場合まで,生体のうける被害は様々である.これに対して細動脈のごとき血管は,生体防御反応として止血反応で対処する.本反応には血管収縮,血小板粘着・凝集,さらに血液凝固,血管修復の過程があり,血液凝固はその一部を担うにすぎないが,止血能全般からみても重要であることに異論はない.
正常状態では血液が血管内で流動性を失うことはない.しかし厳密にいえば,わずかずつではあるが凝固反応は進んでおり,血中で生理的に存在する凝固阻止因子あるいは線溶因子によって,凝血塊の形成ないし増大が抑えられ,見かけ上,非凝固状態に置かれているにすぎない.そしてこれらの因子の作用が病的に低下すると,血液は過凝固状態に傾き,血管内で凝血塊が生じる.動脈壁がアテローム(粥状)硬化に陥ると,接触因子が活性化され,血小板の活性化,さらに動脈血栓の形成へと進展してゆく.このように血液凝固は生体を守る一方,病的状態をひきおこす両刃の刃でもある.
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