今月の主題 新しいウイルス検査法
総説
ウイルス検査の意義と技術の進歩
日沼 頼夫
1
1京都大学ウイルス研究所
pp.983-990
発行日 1981年9月15日
Published Date 1981/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911331
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
序に代えて—り・ね・き・ち・り・け・ち
ウイルス感染症は,臨床症状だけでその病原ウイルスの診断ができる場合が少なくない.例えば多くのはしか(mcasles),おたふく風邪(mumps)水痘(chicken pox or varicella)などがこれである.しかし,いつも必ず臨床症状で診断がつくとは限らない.はしからしいけれども風疹(三日はしか)の可能性もある.ひょっとすると薬疹の可能性も否定できないこともある.それ以上に臨床症状だけからの診断はほとんど不可能なウイルス感染症もまた多い.例えば,いわゆる"かぜ"である.インフルエンザウイルスによるインフルエンザなのか,いわゆるライノウイルスによる"はなかぜ"なのか,あるいは他のパラインフルエンザウイルスによるものなのか,果てはレンサ球菌によるものか,分からぬことがほとんどである.もし分かるとしたら,むしろ何か間違っているか,あるいはひとつの新しい臨床所見として報告すべきものである.
かくて,ウイルス感染症の場合はウイルス特異的診断(または病原診断)が必要となることが少なくない,本稿ではこの診断方法あるいは診断技術が,現在どのようになっているかについて,将来の見通しも含めて述べてみたい.
Copyright © 1981, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.