Senior Course 病理
—病理検査の技術と知識—固定 Ⅱ
橋本 敬祐
1
1順大・病理
pp.230-231
発行日 1976年2月15日
Published Date 1976/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542909297
- 有料閲覧
- 文献概要
固定液の浸透
固定作用の本質は生の組織を硬化させ(薄切のため),かつ被染色性を与える(いうまでもなく染色の目的で)ことにあるのであるから,固定の良否判定や固定がどの程度まで進行したかなどの判定は,すべてこの基準に照らして判断されなければならない.初めの組織硬化のほうは,細胞と組織の構造を規定する主役であるタンパク質の凝固あるいは凝結という現象と密接な関係があって,前回に述べたごとくアルコール,アセトンなどの有機溶媒,硫酸アンモニウムなどの中性塩,トリクロール酢酸,スルフォサリチル酸などの有機酸,アルカロイド試薬,昇宏などの重金属塩を加えることによりタンパクが沈殿し凝固するために組織の硬化が起こることが基礎になっている.したがって,タンパク凝固作用が主となる固定液をJ. R. Bakerは凝固性固定液(coagulant fixative)とし,エチルアルコール,ピクリン酸,昇汞をあげている.これに対して非凝固性固定液(non coagulantfixative)としては,ホルマリン,オスミウム酸,酢酸,重クロム酸カリをあげているがこのグループは一般に組織に対する硬化力の弱いもので,このことは卵白アルブミンを用いた模型実験によっても確かめられている.
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.