特集 日常検査法の基礎知識と実技
病理学
常用固定法の基礎知識と実技
橋本 敬祐
1
1順天堂大学病理学教室
pp.1148-1153
発行日 1965年12月10日
Published Date 1965/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915844
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I.固定に関して実地上大切なこと
数多い固定液の性状をよく知って使いわけることはもちろん大切である。Romeis著Mikroskopische Technik第15版1)をみると約50種の固定液がのっているが,固定液の選択を誤ればどんな染色法を用いてもみたいものがみられない結果に終ることもある。たとえば脂肪滴を検出するのにAlkoholやAcetonを固定に使えば脂肪が溶けてしまう。本当は固定液の選択は病理医の責任に帰するのであって,その検査室の仕事の性質によっていわゆる常用固定液の種類はおよそきまってしまうものである。たとえばホルマリンとCarnoyの組合わせとか,それにZenkerなどの昇汞重クロム酸カリ系統の固定液を加えるとかのたぐいである。以上の3系統にしてもそれぞれ相等数の変法があって名前だけでもZenker,Helly,Maximowなどとわずらわしい。しかし数十種もの固定液をただ無定見に次々と渡り歩くのは,ある段階では致し方ないとしても少くともルーチン・ワークとしては好ましいことではない。やはり少数の常用固定液をきめておき,それを完全に使いこなすように工夫するほうがよい。これは写真のフィルムや現像液をやたらにかえる人がけして利口でないのと同じであろう。
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