Senior Course 病理
—病理検査の技術と知識—包埋操作
橋本 敬祐
1
1順大・病理
pp.360-361
発行日 1976年3月15日
Published Date 1976/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542909330
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包埋の目的はメスの刃が組織に切り込んでいく際に適度の物理抵抗を与えることにあるが,生体内で体液とか空気を含む部分(腺腔とかチステとか肺胞など)では抵抗が全くないから,メスの刃に押されて変形してしまうのを防ぐために何か抵抗性のある物質をつめ込んでおく必要がある.組織の物理的硬度は,水分の多い幼若組織や上皮細胞原形質とかリピドの多い脳組織では小さいし,筋肉とか血管結合織では大きい.しかもそれぞれに硬さの異なる成分が混ざり合っているわけだから,この硬さを一様に高めておかないと一定の厚さの薄切片が得られないことになる.したがって,組織内成分のどれよりも硬度が大きく,しかも組織や細胞内部に浸透して完全に隙間をなくしてしまう物質中に組織を埋め込んでしまわなくてはならない.通常はパラフィンとセロイジンが用いられるが,骨とか石灰はそれよりも更に硬いので,この場合は骨や石灰を軟組織から取り出して別個に薄切するか,あるいは脱灰して硬度を落としてからパラフィンに包埋するか,もっと硬い合成樹脂に包埋したりあるいは合成樹脂やセロイジンよりも硬い氷に埋めて氷結切片とするなどの方法がある.パラフィンは包埋剤としては最も軟らかいが,普通の組織よりはずっと硬く,使いやすいから,たいていの場合パラフィンで十分である.いずれにしても,氷結切片以外はすべて組織内に異種物質を浸透させる必要があるから,包埋には次のような操作が必要である.
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