特集 細胞診―21世紀への展望
第1章 細胞診―現状の問題点と今後の方向性
5.細胞診標準的染色法―パパニコロウ染色とメイ・ギムザ染色
越川 卓
1
Takashi KOSHIKAWA
1
1愛知県立看護大学病態学
pp.1183-1189
発行日 2000年10月30日
Published Date 2000/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904528
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はじめに
細胞診で用いられる標準的染色法は,アルコールによる湿固定系の染色法と冷風による乾燥固定系の染色法の二種類に大別される.アルコールによる湿固定系の染色法としてはパパニコロウ(Pap)染色が代表的であるが,ほかにヘマトキシリン・エオジン(HE)染色も用いられる.冷風による乾燥固定系の染色法としてはメイ・ギムザ(メイ・グリュンワルド・ギムザ;MGG)染色が代表的であるが,ほかにディフ・クイック(DQ)染色やギムザ染色などがあり,特にDQ染色は染色時間が短いため迅速診断の際にしばしば用いられている.
Pap染色はアルコールによる湿固定を行い,ヘマトキシリン液,OG液,EA液で染色する.MGG染色では冷風による乾燥固定を行い,メイ・グリュンワルド液とギムザ液で染色する.このようにPap染色とMGG染色は固定方法から染色液まで全く異なる染色法である.両者を比較した場合,それぞれに相異なる長所と短所を有しており,一概にどちらの染色法が優れているとは言い難い.Pap染色は扁平上皮細胞の観察に適しており,婦人科細胞診のように扁平上皮癌の頻度の高い検査では非常に有用である.また,MGG染色は血液細胞の観察に適しており,血液像や骨髄像の検査には非常に有用である.このようにPap染色とMGG染色は,それぞれの特色の違いから,臓器や診断の目的に応じて使い分けられたり,あるいは併用されたりしている.現在,わが国で日常的に用いられている染色法はおおむね表1に示すとおりである.本稿ではPap染色とMGG染色の特色の違いを中心に紹介する.
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