今月の主題 原発性免疫不全症
話題
遺伝子治療の医療経済
今井 博久
1
,
齋藤 和雄
2
Hirohisa IMAI
1
,
Kazuo SAITOU
2
1北海道大学医学部衛生学
2北海道大学
キーワード:
費用効果比
,
遺伝子導入
,
パテント
Keyword:
費用効果比
,
遺伝子導入
,
パテント
pp.458-459
発行日 1999年4月15日
Published Date 1999/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904054
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1.はじめに
1990年9月に米国1)で世界初の遺伝子治療が原発性免疫不全症(SCID)であるADA欠損症に対して実施され,次いでイタリア2),オランダ3)と続き1995年には日本4)でも実施された.その後,癌やAIDSなどを対象疾患として3,000人以上の患者に試みられている.しかしながら,当初の熱気と裏腹にADA欠損症の遺伝子治療以外に明らかな有効性を示す論文は出ておらず,臨床研究よりも基礎研究をもっと重視すべきといった反省期に入った感がある.
また実用化に向けて,医療経済的な課題も検討する必要がある.近年,医療費の高騰と医療技術の高度化により,米国や欧州を中心に医療に対する技術評価が進んでいる.今後,遺伝子治療は医療経済上の影響が大きくなると見込まれ,そのため技術評価の対象として重要な位置を占めると思われる.この点に関してFuchsら5)は,医療技術が普及していく諸段階においてどの段階でも技術評価(テクノロジーアセスメント)がなされるべきであると主張している.ことに初期の段階における技術評価は,その技術に対してさらに研究投資をすべきか,どのように技術改良すべきかなどを明らかにするうえで重要であろう.
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