特集 神経系疾患と臨床検査
Ⅰ.生化学・遺伝子
ミニ情報
沖縄地方の脊髄性筋萎縮症の分子遺伝学
中川 正法
1
1鹿児島大学医学部第三内科
pp.1266
発行日 1997年10月30日
Published Date 1997/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903473
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沖縄県に多発する感覚障害を伴う神経原性筋萎縮症(以下,沖縄型筋萎縮症)の遺伝子連鎖解析を行い,原因遺伝子座を明らかにした.沖縄型筋萎縮症の臨床的,病理学的特徴は,①成人発症(平均発症年齢39.2±9.0歳)の緩徐進行性の四肢近位筋優位の筋萎縮と脱力,②四肢の筋痙攣,fasciculations,③深部腱反射の低下・消失,④異常知覚,深部感覚障害を中心とする感覚障害,⑤電気生理学的検査で,軸索優位の運動・感覚神経障害,neuromyotonic dischargeの出現,⑥血中クレアチンキナーゼ値の軽度~中等度の上昇,⑦高脂血症・耐糖能異常の合併,⑧脊髄前角細胞の脱落,後索障害と末梢神経有髄線維の著明な脱落,⑨常染色体優性遺伝である.
本症の罹患者20名を含む8家系29人の連鎖解析を行い,第3染色体のDNAマーカーと優位な連鎖を認め(最大lod score 4.04,θ=0.0),本症の遺伝子座が3 p 14.2―q 13に存在することを明らかにした.また,罹患者では,特定の対立遺伝子頻度が対照群に比して有意に高く,この領域における連鎖不平衡を認めた.今回決定された沖縄型筋萎縮症の遺伝子座は,脊髄性筋萎縮症,家族性筋萎縮性側索硬化症,球脊髄性筋萎縮症,遺伝性運動感覚ニューロパチー2型などの遺伝子座とは明らかに区別され,本症が臨床的,遺伝学的に新しい疾患であることが確立された.
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