特集 神経系疾患と臨床検査
Ⅰ.生化学・遺伝子
ミニ情報
パーキンソン病の分子遺伝学
斎藤 正明
1
1新潟大学脳研究所神経内科
pp.1302
発行日 1997年10月30日
Published Date 1997/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903482
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パーキンソン病(Parkinson's disease;PD)は55歳以上の人口の約1%以上にみられる神経変性疾患で1),静止時振戦,筋固縮,寡動,姿勢反射障害を主症状とする.病理学的には中脳黒質線条体系ドパミン作動性ニューロンの選択的細胞変性であるが,選択的神経細胞変性のメカニズムは不明である.PDの大部分は孤発性であるが,頻度は低いもののメンデル遺伝性を示す群も存在し,こうした遺伝性PDの遺伝子の解明を足がかりに,黒質線条体系ドパミン作動性ニューロンの選択的神経細胞変性機構が解明されるのではないかと期待されている.最近になり,常染色体劣性遺伝形式の若年性パーキンソニズム(autosomal recessive juvenile parkinsonism;AR-JP)や常染色体優性遺伝形式のパーキンソン病(autosomal domi-nant Parkinson's disease;AD-PD)などの遺伝性パーキンソン病に対して分子遺伝学的研究が適用され,その病態機序の解明が進んでいる2~4).
AR-JPは40歳未満(平均発症年齢27.8歳5))に発症するパーキンソニズムである.臨床的には姿勢時振戦,ジストニア姿位,姿勢反射障害,深部反射の亢進,睡眠による症状の改善などが特徴的で,わが国を中心に多数報告されている.われわれは13家系を用いた連鎖解析の結果,AR-JP遺伝子座が第6番染色体長腕上の6 q 25.2-27上に存在することを見いだした2).現在,多数のマーカーを用いた連鎖解析,連鎖不平衡マッピングなどによる遺伝子座のさらなる絞り込みを行っている.
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