増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック
Ⅴ 腎疾患
疾患の解説
IgA腎症
髙村 武之
1
,
北村 健一郎
1
1山梨大学医学部内科学講座第3教室
pp.474-475
発行日 2018年4月15日
Published Date 2018/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542201569
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病態
IgA(immunoglobulin A)腎症は本邦における原発性糸球体腎炎の中で最も高頻度にみられる腎炎であり,末期腎不全に陥る代表的な疾患の1つである.わが国で行われる腎生検の約1/3がIgA腎症と診断されており,発症率は10万人当たり約4人,有病患者数は3万3,000人程度と考えられている1).発症に男女差はなく,腎生検時の年齢は10〜20歳と35〜45歳で二峰性のピークを認める.IgA腎症発見の理由として,約70%が学校や職場での尿所見異常によるものであり,感冒後の肉眼的血尿も11%みられる.
IgA腎症は,何らかの原因で糖鎖不全IgA1が糸球体のメサンギウム領域に沈着し腎障害を惹起すると考えられているが,病因はいまだ明らかにされていない.大部分は孤発性だが,家族性発症もあることや明らかな人種差があることから,遺伝的素因があると考えられている.加えて,上気道感染時に悪化する例を認めることなどから,粘膜免疫の病態への関与が想定されてきている2).一方で,長期腎予後は必ずしもよくなく,初診時・腎生検時の尿蛋白量や腎機能障害度によっては高率に末期腎不全へ至ることが知られている.
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