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あとがき
山内 一由
pp.464
発行日 2016年4月15日
Published Date 2016/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542200807
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“雪月花”という言葉があるように,冬には冬のよさがあります.今年は暖冬のまま過ぎるのかと思いきや,小寒を過ぎたあたりから本格的な寒さがやってきました.冬の寒さが厳しければ厳しいほど春を迎える喜びは格別です.春の到来をしっかりイメージできなければ,この時期(1月)に4月号のあとがきを書くのも困難です.寒いのは決して好きではありませんが,メリハリがないのはもっと好きではありません.桜の開花にも影響します.“寒い,寒い”とぼやきながらも,暖冬のまま終わらなくてよかったとしみじみ思います.
四季に恵まれていることは他国に誇るべき日本の素晴らしさです.日本の文化も日本人の穏やかで実直な気質も風情あふれる日本の四季によってつくりあげられてきたといえます.また,日本の政治や経済も明確な四季の存在を前提にその基盤を形成しているといって過言ではないように思います.スキー場の経営は雪が降らなければ立ち行かなくなりますし,冷夏だとビールの売り上げは低迷します.景気が底冷えすれば政治も不安定になります.日本に限ったことではありません.異常気象は社会情勢だけでなく,本号の特集で取り上げた感染症にも影響し,その様相を変貌させます.近年みられる新興・再興感染症の発生がその最たる例です.感染症は社会情勢を不安定にする大きな要因でもあります.まさに悪循環です.暖かい冬や冷たい夏が常態化すると日本人,はたまた日本は一体どうなってしまうのかと不安にかられてしまいます.新安保法制施行を目前に控え,その不安はよりいっそう強くなります.春は待ち遠しいのに.
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