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本増刊号は「はじめよう,検査説明」と題しました.昨年の増刊号の二番煎じのように思われる読者がいらっしゃるかもしれませんが,全く昨年号を意識せずに企画しました.期せずして,似たようなQ&A形式の特集号となってしまいましたが,よくご覧いただくと両者の違いがお分かりいただけるかと思います.昨年の増刊号が臨床検査に携わる方々へ向けたアンサーを取り上げたのに対し,本号では臨床検査を利用する医師へ向けたアンサーとして纏め上げました.説明する内容が同じだとしても,難しさが異なるのです.臨床検査を専らとしていない人に理解を得られるように説明するのは,たとえ医師といえども,臨床検査のプロを対象とする場合よりも難しくなります.これから需要が高まるであろう患者さんへの説明はさらに高度だといえましょう.難易度は,説明を受ける側がどれだけ説明の不十分さを補う能力をもち合わせているか,関連知識をもっているかに依存しており,当然,患者説明の対象が老人や子どもになれば,よりいっそう高度な説明力が必要となります.相手によって表現方法を変えなければならない,しかも,本質を損なうことなく的確に…….難しくて当然です.
以前,子どもに「お父さんのやっている臨床検査ってどんな仕事?」と質問され返答にとても困ったことがあります.結局,子どもが理解できない専門用語で煙にまいて誤魔化してしまいました.普段学生に対して「臨床検査とは,」などと偉そうに講義していながら,全くお恥ずかしい限りです.説明する側は,対象が誰であろうとも納得させることができる確かな知識を身に付けておく必要があり,そのためには,さまざまな視点に立って自らの知識を見つめ直し,曖昧さを排除し,洗練し,凝縮しなければならないのだと痛感させられました.どんなに高度であったとしても,万人に説明できないような知識は真の知識とは呼べないのです.
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