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あとがき
山内 一由
pp.998
発行日 2017年8月15日
Published Date 2017/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542201352
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つくば市内にある私が単身生活を送る宿舎の植え込みには,さまざまな植物が生育しています.手入れが行き届いていないので整然とした美しさには欠けますが,季節ごとに目を楽しませてくれます.ついこの前までは,サツキやツツジが咲いていました.最近ではアジサイが,少しずつ水色に近い淡い青色の花を開きつつあります.もう40年以上も昔になりますが,幼少期を過ごした吉祥寺の旧国鉄官舎の玄関先にも大きなアジサイがありました.薄暗く湿った梅雨の時期には普段にも増してよりいっそうおんぼろが際立つ木造の二軒長屋でしたが,アジサイのどちらかというと藍色に近い青紫色が,わずかな彩りと居心地のよさを与えてくれていました.どちらのアジサイも青を基調としていますが,幼少期に見たアジサイの色のほうが鮮やかで断然美しく,今でもその色を鮮明に記憶しています.過去を懐かしむセンチメンタルな気持ちが,多少バイアスをかけているのかもしれませんが.
ご存じの方も多いと思いますが,アジサイの色は花に含まれるアントシアニジンの一種デルフィニジンと,それと反応するアルミニウムによって決まります.反応するアルミニウムが少なければ,赤色が強くなり,多くなればなるほど青味が増します.土壌中のアルミニウムはリン酸塩などの形で存在しており,そのままの状態では植物中にほとんど吸収されません.しかし,土壌のpHが酸性に傾くと,アルミニウムがイオン化するため,吸収されやすくなります.
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