遺伝医療ってなに?・1【新連載】
アンジェリーナに感謝
櫻井 晃洋
1
1札幌医科大学医学部遺伝医学
pp.82-83
発行日 2015年1月15日
Published Date 2015/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542200185
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今回から“遺伝医療”について,シリーズで原稿を書かせていただくことになった.言葉としては医療のなかに定着してきた感がある遺伝医療だが,そこでどのような医療が提供されているのかについては,一般市民はもとより医療関係者にもまだよく知られていない部分があるように思う.これからこの場をお借りして,筆者個人の視点から,遺伝医療というものを紹介していきたい.
個人的にはあまりにタイミングがよすぎると思ったのだが,筆者が2013年4月に20年以上にわたって在籍していた信州大学を離れて札幌医科大学に着任した時期に前後して,遺伝医療に関係する大きなニュースがいくつか新聞やテレビをにぎわせた.1つ目は,2013年4月から国内で臨床研究として認定・登録施設において開始された,妊婦からの採血によって胎児の染色体の量的異常を調べる無侵襲的出生前遺伝学的検査(メディアは“新型出生前診断”という言い方をしている)であり,2つ目は米国女優のアンジェリーナ・ジョリーが遺伝性乳癌卵巣癌症候群の遺伝学的検査を受け,その結果に基づいて予防的乳房切除術を受けたという,同年5月14日のニューヨークタイムズの手記である.さらにはこの前後から,医療機関を介さずにインターネットなどを通じて遺伝子解析を行うビジネス,いわゆるDTC(direct-to-consumer)遺伝子検査が一気に広まりをみせたことも挙げておきたい.これらのテーマはただ報道されるだけでなく,その後特集(少なくともNHKスペシャルはこの3つを全部取り上げている)などが組まれていることからも社会の関心の高さがうかがえる.
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