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私の勤務している大学は,地域医療を担う医師を育成することを命題としています.全体のなかで比重は小さいのですが,臨床検査の教育においても,地域の診療所で1人勤務となることを想定して,基本的な検査を行えるよう検査手技の実習に力点をおいています.長い間,教室の初代教授で本誌の編集顧問でもある河合忠先生が始められた実習内容を踏襲してきましたが,残念ながら,現実性がないということで取りやめたものもあります.用手法による末梢血算もその1つで,計算盤による算定を長くやっていたのですが,現在は卓上の小型血球計数機を導入してボタン1つで測定させる味気ないものになっています.したがって,手技のポイントとしては,採取直後と測定直前に採血管の攪拌を十分行うことくらいでしょうか.ただし,自動機種の方法論はそのピットフォールという点ですこぶる重要であるため,レクチャーはしっかり行っています.その際,教育的観点では,スタンダードな方法の知識も重要です.例えば,自動計数機でMCVから算出されたヘマトクリットにどのような問題があるのかを理解するには,真のヘマトクリットというものが実際にキャピラリーに採取した血液を遠心して得られるものであることを知っている必要があります.今後,検査技師でこの用手法を知らない,または軽視する世代が増えてくることが予想され,大変憂慮されます.連載してきました「次代に残したい用手法検査」は,このような背景から企画されたものです.地味な企画ですが,臨床検査の基礎中の基礎を再確認いただけたら幸いです.
血液検査について脱線しますが,国家試験ではいまだに「赤血球300万/μL」などと,およそ科学的といえない表記がまかり通っていて,複雑な思いです.また,RBC,Hb,Htから赤血球恒数を計算させる問題もまだ多くみられます.教育的重要性は理解できますが,現在の検査ではHtをキャピラリー遠心で求めることはほとんどなく,また報告時にMCVを隠すことはあり得ないわけですから,特に臨床検査技師の試験においては,自動計数機のデータであることを前提とし,自動計数機の特徴を問いかけるほうが時代に合っていると思います.みなさんはいかが思われるでしょうか.
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