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あとがき
山内 一由
pp.698
発行日 2013年6月15日
Published Date 2013/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542103462
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新年度の準備におわれながら,このあとがきを記しています.いつになく,新年度への移り変わりが早く感じられましたが,それ以上に春の到来は瞬くまでした.例年より2週間も早かった今年の桜の開花には,虚を突かれた感があります.この6月号が読者の皆さまのお手元に届く頃の陽気をとても想像することができません.
以前から桜の開花に冬の寒さが関係していることは何となく知ってはいましたが,先日たまたま見ていたテレビ番組で,桜の開花を早めた“休眠打破”のメカニズムについて学びました.桜は,花が散って間もなく翌年の開花に向けて花芽の生長が始まります.気温の低下によりいったん花芽は休眠状態になりますが,不思議なことに,さらなる気温の低下が休眠を打破し,その後,今年のように一気に暖かくなると開花が促されます.厳しい寒さがないとかえって目覚めが悪く,開花が遅れます.いまさらですが,桜の花のように繊細でとても巧妙なこの“休眠打破”のメカニズムに感心させられるとともに,「成長には,時として真冬のような厳しさも必要なのだ」と諭してくれるかのように咲く桜に対し,今まで以上に思い入れが強くなりました.
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