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心弁膜症は,成因からは先天性と後天性,構造からは狭窄・閉鎖と閉鎖不全,とに大別できる.先天性心疾患には代謝障害も含まれるが,心奇形が圧倒的に多い.心奇形は全出生の1%にみられる.報告により若干の違いはあるが,Hurstの最新版によると,心室中隔欠損症が最も頻度が高く心奇形の28.3%,続いて肺動脈狭窄が9.5%で,大動脈弁閉鎖は6番目4.5%である1).組織像は補足的な意義を有する.心筋細胞の空砲変性,圧負荷に伴う心筋細胞の肥大,間質の浮腫などは心奇形でしばしばみられるが,各心奇形に特異的な心筋の病理組織像はみられない.年余の経過をたどる場合には,肺の小型筋性動脈の内膜の形態学的変化が続発性病変として病期を示唆する指標となる2).
後天性の弁膜症は,リウマチ熱に関連した疾患と非リウマチ性とに大別できる.リウマチ熱に関連した疾患では,左心系すなわち僧帽弁あるいは大動脈弁の狭窄・閉鎖と閉鎖不全が主である.リウマチ熱に関連した僧帽弁狭窄は以前に比し,経済状態の向上および治療の進歩により現在では減少した.特徴的肉眼所見である弁の融合と石灰化すなわち魚の口(fish mouth)に例えられる変形した僧帽弁が特徴であり,診断根拠となる.組織像としては上記の肉眼所見に加え,アショッフ結節が認められれば確定診断となる.病理組織検体としてみることはあまりない.先進国においては,非リウマチ性心疾患の頻度がリウマチ性よりも高くなった.大動脈弁狭窄・閉鎖不全,膠原病による心内膜炎,粘液腫様変化による僧帽弁逸脱症,細菌性心内膜炎,非細菌性血栓性心内膜炎,僧帽弁輪石灰化などが代表的疾患である.本稿では現在増加の著しい大動脈弁狭窄を採り上げる.
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