Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
1. はじめに
漢方は中国の医学とよく誤解されるが,江戸時代に本邦で,「蘭方」に対して古来の自国の医学を指す言葉として命名された医学であり,「Kampo medicine」と言えば,PubMedのシソーラスにおいても日本の伝統医学と説明されている.医療用漢方製剤は,1967年に4種類認められたのを皮切りに,1976年には41種類となり,徐々に増加し,現在では148種類あり,それとは別に煎じ薬用には200種類の生薬が保険でカバーされている.
2001年に文部科学省の医学教育モデルカリキュラムに漢方教育が入ったことから,80ある全国の医学部・医科大学において漢方教育がなされるようになり,漢方を日常診療で用いる医師数は83.5%にものぼり,本邦の医療に欠かせない存在となっている.
しかしながら漢方の臨床研究は,①個別化医療である,②対象が人間全体であり,マルチターゲットであることが多い(例えば漢方の水毒という病態は頭痛,めまい,立ちくらみ,浮腫などを症状として呈し,五苓散などが処方される.水毒が改善されるとこれらの症状が同時に改善される),③患者主観を重んじる医療である,といった理由で,無作為化対照試験(randomized controlled trial;RCT)をはじめとした西洋医学的研究手法が適応しにくいため,こうした複雑系を一度に解析する新しい手法が求められている.
一方,基礎研究に目を移すと,漢方薬は複数の生薬から構成され,さらに1つ1つの生薬の成分が複雑であることから,単一成分の研究のようには単純でない.さらに,生薬の中の成分が経口内服により,腸内で腸内細菌によって代謝,吸収された後,門脈を通って肝臓でさらに代謝されて,初めて薬効成分になるものもあり,複雑である.
本稿では,漢方薬の薬効と腸内細菌叢との密接な関係について述べたいと思う.
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.