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北京オリンピックで盛り上がった夏も終わり,日本列島は過ごしやすい季節となりました.秋の学会シーズンを迎えて,読者の皆様に於かれましては益々ご活躍のことと存じ上げます.
今月号の主題として取り上げた「結核」は,社会の環境整備や予防医学が進歩した今日においても,わが国において依然としてポピュラーであり,忘れてはならない疾患です.私が勤務しているような一般の市中総合病院においても,入院した患者さんが開放性結核であることがわかり,職員やほかの患者さんに対する感染拡大防止のための事後処理に奔走しなければならなくなるケースは決して少なくありません.こうした結核の患者さんには,過去に結核の感染を受けている高齢者が種々の理由により免疫力が低下して発症する場合もあれば,かつて結核が蔓延していた頃と同様に若年者が感染し発症してしまう場合もあります.また,依然としてわが国では増加傾向にあるといわれるHIV感染者に発症することもよく知られています.特に社会的活動性の高い若年者が開放性結核を発症した場合には,家族内に止まらず学校や職場などの集団の中で多くの感染者を出すリスクがあるため,より大きな問題となる可能性があります.一方,病原微生物としての結核菌をとらえた場合,ほかの病原細菌と同様に近年多剤耐性菌が増加しており,治療上大きな問題となっております.今月号ではこうした結核の現代における問題点を取り上げ,免疫学・疫学といった基礎的な面から検査・治療・予防といった臨床現場での対応まで,様々な視点からそれぞれの専門の先生方に解説していただきました.いずれも興味深いup to dateな内容ですので,ぜひご一読いただき,検査医学に携わる読者の皆様の今後の活動の参考にしていただければ幸いです.
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