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あとがき
岩田 敏
pp.1138
発行日 2012年10月15日
Published Date 2012/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542103180
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このあとがきを書いているのは,セミの鳴き声が漸く本格化してきた7月の終わりです.今年は何時になくセミの鳴き始めが遅く,東京でも梅雨明けしてしばらくしてからのことでした.通常首都圏ではアブラゼミのジージーという声に始まり,続いてミンミンゼミのミーンミンミンミンミーが聞かれるようになり,子どもたちの夏休みも終わりに近づき,宿題の提出が気になる頃になるとツクツクボウシのオーシーツクツクが聞こえてきます.箱根や日光など避暑地では,ヒグラシのカナカナカナが涼感を感じさせます.同じ日本でも九州などの西日本ではクマゼミが主流派ですが,近頃は気候温暖化のためにクマゼミの生息域が北上し,首都圏でもシャーシャーシャーという独特の鳴き声が聞かれるようになってきました.しかし昨年は聞こえていたクマゼミの鳴き声が,今年は聞こえて参りません.
そういえば先日朝のイヌの散歩で,夜が明けたばかりの六本木界隈を歩いていたときのこと,少し控えめなチッチッチ,ニィニィニィという声が聞こえてきたので,植え込みの木の幹に目をやると,他のセミたちと較べて明らかに小振りのニイニイゼミの姿を見つけることができました.このニイニイゼミ,私がまだ小さかった頃は,夏休みにセミ取りに行くと,必ずセミかごがいっぱいになるほど捕れたものでしたが,この10数年間ほとんど目にしたことがございませんでした.久しぶりの対面に懐かしい気持ちになりましたが,それにしてもニイニイゼミはどうして減ってしまったのでしょうか?
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