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今月の主題となったオートファジー(Autophagy)は,細胞がもっている,細胞内の蛋白質を分解するための仕組みの一つです.真核生物にみられる機構であり,細胞内での異常な蛋白質の蓄積を防いだり,過剰に蛋白質を合成したときや栄養環境が悪化したときに蛋白質のリサイクルを行ったり,細胞質内に侵入した病原微生物を排除したりすることで生体の恒常性維持に関与しています.このほか,胚発生の過程でのプログラム細胞死や,ハンチントン病などの疾患の発生,細胞の癌化抑制など,生命活動の様々な場面に関与していることが明らかにされてきているようです.今月号では東京医科歯科大学の水島昇先生に企画をお願いし,オートファジー研究に関する最近の話題について様々な視点からまとめていただきました.臨床医である私にとっては耳慣れない分野ではありますが,様々な疾病の発症と関連性がある点で,とても興味深く読ませていただきました.臨床検査医学に携わる読者の皆さまにも,それぞれの専門分野との関連性を思い浮かべながらお読みいただければと考えます.
さて,本年4月にメキシコで発生が確認され,以降全世界に伝播したブタ由来インフルエンザウイルスA(H1N1)による新型インフルエンザは,わが国においても流行が広がり,沖縄での大流行に続き,9月下旬になって首都圏を中心に急速に患者数が増えつつあります.このままでいくと10月に全国的な流行の来ることが現実になりそうです.ブタ由来新型インフルエンザワクチンが接種できるようになるのは11月以降になる見込みなので,どうやらワクチンなしに流行に突入してしまうという計算になります.ブタ由来新型インフルエンザは,致死率の高いトリインフルエンザA(H5N1)とは異なり,従来の季節性インフルエンザとほぼ同様の病原性といわれていましたが,これまでの臨床例の集積から,肺で増殖しやすく,喘息,妊娠,腎疾患,糖尿病,免疫不全などの基礎疾患のある症例や小児では重症化しやすく,季節性インフルエンザより致死率の高いことがわかっております.マスク,咳エチケット,手洗い,うがいなどの基本的な感染防止対策に努め,発熱・咽頭痛などの症状を発症した際には,慌てずに医療機関を受診し,インフルエンザが疑われれば早めに抗インフルエンザ薬による適切な治療を受けることが重要です.
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