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あとがき
濱﨑 直孝
pp.358
発行日 2008年3月15日
Published Date 2008/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101563
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今月は,主題として「アルツハイマー病」を取り上げた.アルツハイマー病の全体像,遺伝的背景,病因解析,診断,治療,予防にわたって最新の情報を,それぞれの専門の先生方にわかりやすく解説していただいた.それぞれの項目を読み進んでゆくと,この難しい疾病について,随分,研究が進んでいると感じる.一方で,われわれが知り得えている知識はアルツハイマー病の氷山の一角にすぎないのだろうなとも思われる.個人的には,「アルツハイマー病の抗体治療」を驚愕しながら読ませていただいた.噂に聞いてはいたが,抗体が血液脳関門を通過し血管から組織内へ進入するなど科学的常識の枠を超える話で眉唾的な印象を持っていただけに,ある程度の事実に基づいて説明されると,言い古された言葉ながら常識の怖さや,先駆的研究者の勇気に感嘆している.このような抗体治療が現実のものになるかは,まだまだ,定かではないが,新しい形の治療方法として,アルツハイマー病に限らず,現時点での科学的論理的手法ではお手上げの様々な難病の一部に利用できる可能性があるような気がしている.核酸が細胞膜を透過したり,抗体が血液脳関門を通過し血管から組織内へ進入するなど,細胞膜の物質透過の基礎研究を何十年と続けている者にとっては,世には不思議なことがいろいろあるものだと思わざるを得ない.
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