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3月11日にとんでもない地震が東日本全体を襲いました.2日が経過して,この「あとがき」を書いている時点でもまだ被害の全貌ははっきりしていません.岩手県,宮城県,福島県の沖合の地形を沿う形で約400kmにわたってM9.0の地震が発生した模様で,北海道から首都圏までに死者の報告が出ており,震源地に近い岩手,宮城,福島の各県だけですでに1,000名を超える死者・行方不明者が推測されています.また,ある地域では10,000名の住民すべてに連絡が取れていないという報道もなされています.テレビで報道される津波の映像はパニック映画のCGではないではないかと目を疑い,このような悲惨なできごとが現実に起こっているとは信じがたく痛ましく言葉もありません.1995年1月に発生した阪神・淡路大震災の1,000倍ものエネルギーであるらしく,原子力発電所の被災もあり,その全貌が明らかになることを考えると空恐ろしくなっています.被災者の方々へは心よりお悔やみを申し上げます.すでに,政府や各県からの政策面・人的な支援が始まってはいますが,われわれ1人1人もできる限りできる範囲で助け合ってゆかねばならないし,被災者の皆様には申しわけなく感じております.
さて,今月の主題である癌幹細胞は癌の発生にかかわる問題であり,注目度が高く興味がある方が多いことと思いますが,その本質や研究を理解している人々は案外少ないのではないかと推測しています.今月号の主題企画では,本邦で癌幹細胞研究にかかわっておられる第一線の研究者に,まさに,進行している研究をできる限りわかりやすく解説をしていただきました.総論では,癌幹細胞アイディアの起源から最近10年あまりに急速に進展した癌幹細胞の概要を「癌研究フロンティア―癌幹細胞」として体系的に平尾敦先生(金沢大学がん進展制御研究所)にまとめていただき,発想だけであった“癌幹細胞”が現実の研究テーマになるきっかけを作った急性骨髄性白血病研究に関して岩崎浩巳先生(九州大学病院血液・腫瘍内科)のグループに,固形癌に関しては山田大作先生(大阪大学消化器外科学)のグループにまとめていただきました.さらに,現時点で,癌幹細胞に関する研究成果が臨床検査として日常臨床の場で利用されるまでにはなっていないのではないかと思いますが,最先端の研究手段としての検査を「癌幹細胞の同定法」,「癌幹細胞マーカー」について紹介していただきました.近い将来このような検査が日常検査として活用され,癌対策に有効に利用されることを祈念しております.
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