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今月号の主題として「漢方薬・生薬と臨床検査」を取り上げた.現在,わが国の医学・医療の主体は西洋医学であるが,「漢方」(中国医学)も根強くまた脈々と続いている.最新の科学を基礎とするわれわれには,試行錯誤の蓄積や経験を体系化した「漢方」は科学的根拠が不十分で馴染みにくい面がある.一方,現代医学の限界と行きすぎに対する反省から,欧米でも「漢方」の効用を見直し注目するようになって久しい.実際に米国では真っ先に鍼治療を承認され,今では漢方薬の薬効分析が治療薬開発の一端を担っている.臨床検査関係では,京都で2002年に開催された第18回国際臨床化学会(18th International Congress of Clinical Chemistry and Laboratory Medicine)で取り上げているし,成書としてはアメリカ臨床化学会(AACC)から「Effects of Herbs and Natural Products on Clinical Laboratory Tests」(Narayanan S, Young DS, eds.)などが出版されている.西洋科学の視点から「漢方」を“科学的”に分析し医療へ役立てようとの試みである.
このような視点から本号の企画を(前)日本生薬学会会長・正山征洋先生(長崎国際大学・薬学部教授)にお願いした.巻頭言では正山先生が「漢方薬」「生薬」の定義をまず明確にされ,さらに効果判定の基準となる「証」について述べられている.本号は「漢方薬・生薬の品質保証」,「漢方薬・生薬の作用機序」,「活性成分の分析」,「遺伝子分析」「“証”についての解析」などから構成され,西洋医学の尺度を用いて漢方医学の解説を試みている.
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