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新年明けましておめでとうございます.あっという間に2010年が通り過ぎ2011年になりました.昨年一年間のわれわれの企画が読者の皆様の期待に添えるものであったのか確信はもてませんが,今年で第55巻になる「臨床検査」の歴史と伝統に恥じないように企画・編集に努めてまいりたいと,年頭に当たり編集委員一同決意を新たにいたしております.今年もよろしくお願いいたします.なお,今年より自治医科大学臨床検査部・臨床検査医学の山田俊幸教授に新しく編集委員としてご参加いただくことになりました.山田俊幸先生の新鮮な企画にもご期待いただければと存じます.
さて,2011年年頭の企画はβ2-microglobulin(β2-m)です.β2-mはHLA Class Ⅰ蛋白質複合体の構成成分であり,膜蛋白質であるHLA Class Ⅰ蛋白質が細胞膜表面に出現するのに必須の成分です.シャペロンの一種として理解すればよいと思いますが,HLA Class Ⅰ蛋白質複合体として細胞表面に出現した後に,β2-mがHLA Class Ⅰとしてどのような生理機能をもっているか浅学にして存じません.ご承知のように,HLA Class Ⅰ蛋白質複合体は体内のあらゆる細胞表面に存在しており,しかも,β2-mはHLA Class Ⅰ蛋白質とは共有結合では結合しておりませんので,HLA Class Ⅰ蛋白質複合体が細胞表面に出現した後は,HLA Class Ⅰ蛋白質から解離して,血液中に存在することになります.β2-mは分子量11.8kDaの低分子蛋白質ですので腎糸球体で濾過されますが,その大部分は近位尿細管で再吸収されます.その仕組みは忰田亮平先生らが総論において詳しくご紹介いただいておりますが,腎尿細管機能異常症患者の尿で最初に発見されたのも容易に納得できます.臨床検査領域では,当初は腎機能との関連で注目されたに違いありませんが,伊藤喜久先生が巻頭言に書いておられるように,その後,非常に幅広く臨床検査マーカーとして利用されております.現在では,非特異的な腫瘍マーカーとして定着しており,本企画では独立した項目としては取り上げられてはおりませんが,Bリンパ球の腫瘍,多発性骨髄腫,リンフォーマ,サルコーマなどのマーカーとして,また,脊髄液中のβ2-mは神経系への癌転移のよいマーカーとしても利用されております.
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