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はじめに
ヒトゲノム・遺伝子解析研究の進展により得られるようになった各種の個人遺伝情報は,医療の向上や企業などが実施する健康サービス産業などに幅広く活用され,国民の生活の質の向上に大きく寄与することが期待されている.一方,個人遺伝情報は個人だけではなく,血縁者の遺伝的素因も明らかにする.このため,個人遺伝情報を医療や健康サービスに用いる場合には,その取り扱いによっては倫理的・法的・社会的問題を生ずる可能性があることから,個人遺伝情報は本人および血縁者の人権が保障され,社会の理解を得たうえで,厳格な管理の下で取り扱われる必要がある.また,個人遺伝情報の取り扱いに際しては,関連する各種要素(科学的・技術的および倫理的・法的・社会的要素)に十分な配慮が必要である(図1).
このようななかで,これまで様々な場面で「遺伝子検査」,「体質遺伝子検査」,「個人遺伝情報」,「遺伝情報」などについて議論がなされてきたが,これらの用語を各人がそれぞれの思いで活用し,定義があいまいなままで議論が重ねられてきた.例えば「保護すべき対象としての遺伝情報」を定義することなく,遺伝情報にかかわる倫理的・法的・社会的問題について取りまとめられた報告なども数多く見受けられる.
このような情勢に鑑み,まず「遺伝子関連検査の分類」と「個人遺伝情報および遺伝情報取り扱い事業者の類型」を紹介する.さらに,遺伝子検査ビジネスの拡大にかかわる多方面からの課題に答えるべく,2006(平成18)年4月に「NPO法人個人遺伝情報取扱協議会」を設立し,その活動として,2007(平成19)年4月に「個人遺伝情報を取扱う企業が遵守すべき自主基準」(案)〔以下,「自主基準」(案)という〕を策定したので,その概要について紹介する.
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