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近年,高機能自閉症,アスペルガー障害などの発達障害が精神医学の世界で大流行である。国際的な診断分類では発達障害に分類されないものの専門家の間ではそのほとんどが発達障害であると考えられている注意欠陥/多動性障害も今や耳慣れたものとなっている。今年,福岡市で開催された第102回日本精神神経学会総会の精神医学研修コースにおいて筆者は国立精神・神経センターの齋藤万比古先生と2人で軽度発達障害を企画したが,申し込みが多く早々と定員となり締め切られる人気であった。これは決して自慢して言っているのではない。齋藤先生には叱られるかもしれないが,児童精神科を専門にしている医師であれば誰が企画しても同じ結果であったと思う。それほど,発達障害,特に“軽度”発達障害は今や注目の的なのである。
この流行の原因としてはいくつかの要因を挙げることができる。1つは,軽度発達障害の軽度とは精神遅滞がないかあっても極々軽度であることを意味しているが,それは彼らが健常児・者と同じ集団で教育を受け生活を共にしているということである。以前は集団のクッションで吸収されていたが,近年の学校の持つ問題解決能力の低下によって問題が顕在化したという考え方である。その結果,障害に気づかないで原因がわからないまま問題が続くか,気づいても対処が困難となる。2つめは,2005年4月の発達障害者支援法の施行が挙げられるが,これによって軽度発達障害に対してさらに世間の認知を高めることはあったものの,むしろそれよりも注目を浴びた結果の法制化であると考えるほうが妥当であると思われる。3つめは学校の問題解決能力の低下とも関連するが,相談機関への来所・受診の増加,すなわち軽度発達障害の検出率の著しい増加である。少子化,核家族化や地域社会の崩壊により子ども個人の持つ問題がより顕在化しやすくなっていることにも影響を受けていると考えられる。4つめは軽度発達障害児・者が引き起こした事件に対するマスコミの取り上げ方の問題である。これについては詳述しないが結果的に新聞や週刊誌などでこの障害について目に触れる機会が増えたことは確かである。これ以外にもいくつかの要因・仮説は考えられるがいずれにしても多数の要因が複合的に重なり合って流行の背景を形成しているものと考えられる。
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