特集 遺伝子検査―診断とリスクファクター
3.遺伝子診断の実際
コラム
保因者検査
鈴森 薫
1
1名古屋市立大学大学院医学研究科
pp.1492
発行日 2007年11月30日
Published Date 2007/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101458
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一対の遺伝子のうちの片方に遺伝子変異を有しているものの,本人に疾病の発症はみられず,将来にわたって健常状態を維持できるものをその遺伝子(遺伝病)の保因者という.これには,常染色体劣性遺伝病のヘテロ接合体,X連鎖劣性遺伝病のヘテロ接合体(女性)が含まれ,染色体優性遺伝病で遺伝子変異を有しているものの,まだ発症しないものは未発症者で保因者とはいわない.染色体領域では,均衡型転座を持つ個体も転座の保因者といっている.家系内に常染色体劣性遺伝病やX連鎖劣性遺伝病(男性)の患者がいた場合,受診者が保因者かどうかを検査し,将来同様の遺伝病の子どもが生まれる可能性があるかどうかを知るために行われる.常染色体劣性遺伝病であっても結婚相手が同じ遺伝病のヘテロ接合体でなければ,まったく正常な夫婦と変わることはない.しかし,X連鎖劣性遺伝病のヘテロ接合体である女性が正常男性と結婚した場合,生まれてくる男児のうち半数はその変異遺伝子を持つヘミ接合体となり病気が発症する.遺伝子で確定診断がまだできなかった時期には,男女の産み分けとか性別判定のための出生前診断が行われてきたが,いまでは絨毛や羊水の遺伝子検査で性別のみならず,病気を発症するかどうかの確定診断もできるようになった.両親のいずれかが均衡型転座を保有する場合には,流産を繰り返すとか異常児出産をみることが多く,出生前診断の対象となっている.
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