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はじめに
習慣飲酒は肝炎ウイルスとともに,慢性肝障害の2大要因の1つである.わが国の肝硬変症例において,純粋にアルコールのみに起因する症例の割合は大病院を主体とした集計では10~15%にすぎないとされている.しかし,200万人を超えると予想されるアルコール依存症の存在を考えると,医療機関を受診することなく潜在しているアルコール性臓器障害患者も多いと予想される.習慣飲酒は,肝・膵などの障害に加え,脳出血,高血圧,痛風などの増悪因子でもあり,問題飲酒者を早期にかつ的確にスクリーニングすることは極めて重要である.
ポストゲノムあるいはポストシークエンス時代に入り,トランスクリプトーム,さらにはプロテオームが盛んに論じられるようになった.DNAマイクロアレイなどによるmRNAの網羅的発現解析が現在盛んに行われているが,①細胞内でのmRNA発現量と蛋白産生量とは必ずしも比例しないこと,②蛋白質の活性は細胞内での局在やプロセシング,翻訳後修飾などmRNAとは別のレベルで制御されていることなどから,最終的には蛋白レベルの解析が必須となってくる.プロテオーム解析はその解析技術の進歩とあいまって,近年急速な展開をみせている.全発現蛋白質を対象とする網羅的解析に加えて,特定の病態に関与する蛋白質をターゲットとする疾患プロテオミクス,創薬プロテオミクスは特に臨床に深くかかわってくる.従来の二次元電気泳動による分離技術に質量分析法による蛋白質同定技術を組み合わせた手法は現在もプロテオーム解析の基本であるが,近年の解析技術の進歩は,二次元電気泳動のメリットを生かしつつ従来の方法を改良する方向と脱二次元電気泳動の方向に大別される1).本稿では従来の二次元電気泳動法および近年注目されているプロテインチップテクノロジー(SELDI-TOF MS法)を用いた筆者らのデータについて述べる.
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