特集 プロテオミクスに向かう臨床蛋白質検査
3章 動き出しているプロテオミクス研究
4. SNPsと病態プロテオミクス
中西 豊文
1
Toyofumi NAKANISHI
1
1大阪医科大学病態検査学
pp.1395-1405
発行日 2003年10月30日
Published Date 2003/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101027
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
90年代初めから行われてきたヒトの全遺伝子の塩基配列(ヒトゲノム)の解読が2000年6月,ついに完了した.これからは,このゲノム情報を活用した応用研究(ポストゲノム)が活発に行われるようになってくる.その一つに,SNPs(Single Nucleotide Polymorphism:スニップ,1塩基多型の略語)解析がある.DNAの塩基配列は,個人によってわずかずつではあるが異なっていることが知られている.この違いは,全ゲノム中の約1%,数にすれば,数百万か所あると予想されており,病気の罹りやすさ,薬の効き方,副作用の出現率などの相違もSNPsに関連すると考えられている.しかし,糖尿病や心疾患などの多因子病では,遺伝要因と環境要因が複雑に関連するため,その原因遺伝子やSNPsを発見しただけでは,直接的な治療法になかなか結びつかない.そこで,細胞・組織内の蛋白質を網羅的に解析する,いわゆるプロテオーム解析が重視されるようになった.プロテオーム解析の手法の一つは,二次元電気泳動法で蛋白質を網羅的に分離し,質量分析法で蛋白質を同定する.本項では,われわれのプロテオーム解析法の特徴をまとめ,次にわれわれがこれまで行ってきた疾患関連蛋白質の解析および糖尿病性網膜症における血管新生制御因子,癌特異蛋白質の同定などの解析例を紹介する.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.