連載 アーキテクチャー×マネジメント・50
社会医療法人恵仁会 くろさわ病院
中山 茂樹
1
1千葉大学大学院工学研究科
pp.90-95
発行日 2019年2月1日
Published Date 2019/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541210890
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■まちづくりと病院づくり
長野県佐久市には,故・若月俊一先生が地域医療の概念を実践し,原点ともみなされる有名な佐久総合病院があり,またそこから派生し救急・急性期を担う佐久医療センター,さらに市立浅間総合病院などの大規模病院がある.こうした医療環境の中で,100床に満たない小病院・くろさわ病院が,地域への医療提供として何を期待されているのか,まちの成り行きとともに必要とされる医療・介護サービスとはどのようなものなのか,人口の推移や市民活動の変化に表れるまちの変遷とも深く関わり合いながら地域医療を実践するとはどのようなことなのか.既に理事長・病院長の黒澤一也氏ご自身による本誌への寄稿がある1)が,本稿ではまちづくりと病院づくりについて,建築(学)の視点から「くろさわ病院」(以下,同院)の変遷を概観しながら考えたい.
黒澤理事長の祖母が産婦人科医院を開設したのは1937年のことである.その後,1972年に病院となったが,高齢者医療と介護への転換を図り,1988年には介護老人保健施設を開設,1998年以降にはケア付き住宅の開設など介護サービスの拡大を図った.しかし,第2代理事長の急逝などもあり,法人経営はしばらく低迷していた.現理事長が大学を辞して病院に戻り,地域ニーズを読み取りながら市内初の宅老所や有料老人ホーム・託児所を開設,また,さまざまな研修事業などにより職員満足度を上げる取り組みも実施して職員確保を図った.さらに障がい者事業への展開も始め,地域の需要に応じた事業を拡大してきた.
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