連載 アーキテクチャー×マネジメント・40
名古屋大学医学部附属病院
山下 哲郎
1
1工学院大学建築学部建築学科
pp.274-279
発行日 2018年4月1日
Published Date 2018/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541210682
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■はじめに
国立大学法人附属病院の場合,毎年度の概算要求で建物の整備を計画するので,長期的な視点で作成されるマスタープラン(以下,MP)を持つことが必須になる.本稿では,筆者が関わった,名古屋大学医学部附属病院のMP作り(2001年作成)と,その後の現在に至る実際の使われ方,そして将来に向けた問題や課題,に焦点を絞って考えてみたい.
本題に入る前に,MP作成の背景に触れておきたい.名古屋大学医学部附属病院では,主に老朽化の解消が主眼であったが,その以前に作成されたMPでは,中央診療棟をⅡ期・2棟の計画となっていたものを,「可能な限り早く建設して使用したい」という医療者の強い希望があり,Ⅰ期で1棟計画に変更した.また当時は,研究成果を実用の段階に移すための施設(トランスレーショナル・リサーチセンター)も,中央診療棟の中に整備しようという思惑もあったが,概算要求という手続きを踏むわけなので,思惑通りに建設の時期が決められず,段階や手順を示す程度の計画にならざるを得なかった.また,エネルギーセンターや病棟などの既存施設が存在し,それらを長期間使い続けることを前提に,その途中段階(完成した姿というものが存在しない)での完結性が求められること,さらには教育・研究施設との共存を前提としていたことなどを,あらかじめ弁解しておきたい.
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