医療への提言・17
医師づくり(I)
水野 肇
pp.82-85
発行日 1977年11月1日
Published Date 1977/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206388
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職業としての医師
どこの国でも医療には苦悩しているが,そのひとつに「医師づくり」がある.いうまでもなく,医師は医療の中核的存在であるが,医学が日進月歩で進むために,その知識と技術を吸収することが大変なことであるという面と,もうひとつは,医師の人間性という面である.社会全体が文明や科学の進歩によって,ドライでクールになりつつある.しかし,そのなかで,いぜんとして医師にたいしては,仁術的な面が要求されている.これは,医学のもつ宿命だということもできるのかも知れないが,反面,医師が患者や社会との接点をどうとらえるかというのは,永遠のテーマなのかも知れない.
ともあれ,医師がきわめてむずかしい職業であるにもかかわらず,世界中で,医師はもっとも魅力のある職業とされている.入学試験もむずかしいし,秀才が殺到しているのが現状である.医師の魅力は,いくつかあるだろうが,もっとも大きな魅力は,専門的技術をもった自由業という点にあるだろう.巨大な企業のなかで一つの歯車として一生を送るよりも,自分の裁量で,一人で歩いていくことがライセンスによって保証されているといった点で,弁護士とならぶ職業であることはまちがいない.
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